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ビットコインのマイニング取引は電力取引になりつつある

by VT Markets
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Aug 7, 2026

ビットコインそのものではなくマイニング株を保有する理由はシンプルだった。マイナー(採掘企業)は、ビットコイン価格に対して「てこ(レバレッジ)」の効いた利益構造を持つ。コスト(主に電力・設備運用)は大きくは変わりにくい一方、売上はビットコイン価格で増減するため、株価の値動きが大きくなりやすい。

つまり「ビットコイン+上振れ余地(その分リスクも大きい)」という取引だった。

この構図が変わり始めている。ビットコインは依然として中核だが、一部マイナーは価値の源泉が「採掘したコイン」ではなく「電力インフラ(送電網につながる設備)」ではないかを探り始めた。

マイニングはまだ儲かる。だが、もっと儲かるものがある

ハッシュプライス(hashprice:計算能力1単位あたりの採掘収益)は、半減期(halving:ブロック報酬が半分になるイベント)以降、圧迫されている。ネットワークのハッシュレート(hashrate:全体の計算能力)が増え続けるため、各マシンが得られる取り分が小さくなり、さらにブロック報酬も従来の半分になった。安い電力で効率よく運用しても、2年前より利益率が薄いケースは多い。

一方、AI企業は電力を求めて動き、支払い方が違う。マイニングは良くても「1メガワット(MW:電力の大きさの単位)あたり年数十万ドル」程度で、市場価格で日々変動し、長期的には下がりやすい。これに対し、同じ1MWをAIの利用者(テナント)に貸せば、年100万ドル超もあり得る。しかも10年以上の契約で固定される。

物語の転換ではなく、計算の問題だ。電力を持ち、10年契約で3倍の対価を提示されるなら、話を聞くことになる。

なぜ電力が「希少な資産」になったのか

ここから話は複雑になり、発表内容が実態以上に見えることもある。

マイニング拠点は「簡易な建屋」で成立する。中の機械は、電力品質のばらつき、バックアップ電源なし、粉じん、摂氏45度の暑さにも耐え、電力網(グリッド)の都合が悪くなれば数秒で停止できる。だからこそ、マイナーは最初から安い電力を得られた。誰も欲しがらない電力を引き受けていたからだ。

AI計算はそうはいかない。学習(トレーニング:大量データでAIモデルを作る計算)中に停電すれば、数日分の作業が失われる。安定した電力と冗長化(バックアップ)が必要だ。液体冷却(liquid cooling:熱を液体で効率よく逃がす方式)も求められる。顧客は稼働率(アップタイム:止まらないこと)保証を求め、違反時の補償も伴う。

そのため簡易な建屋自体の価値は低い。価値があるのは送電網への接続だ。変電所(substation)、ケーブル、そして接続の順番待ち(系統連系の待機列)における地位である。多くの地域でこの待機列は数年に及ぶ。すでに接続され、大きな電力を引き込んでいる拠点を持つこと自体が希少で、短期間では増やせない。

つまり、マイニング拠点の転用は「改修」より「建て替え」に近い。1MWあたりの投資額は、元の簡易施設の約10倍になることもある。転換が本物である一方、四半期単位ではなく年単位で時間がかかる理由でもある。

「ビットコインマイナー」というラベルを外すと、実態は3種類の事業に分かれる。

  • 貸主(ランドロード)。建屋と電力を用意し、テナントが自前のコンピューターを持ち込む。10〜15年の賃料収入を得る。1MWあたりの収益はもう一方より小さいが、契約で安定する。不動産ビジネスに近く、評価(バリュエーション:企業価値の見積もり)もそれに準じる。
  • 運営者(オペレーター)。自社でコンピューター(GPUなど)を購入し、計算時間を時間単位で販売する。1MWあたり売上は大きいがリスクも大きい。高価なチップは陳腐化(価値低下)が早く、稼働率を維持し続ける必要がある。
  • 依然としてマイナー。収益源はビットコイン。AI事業は計画や調査、または小さな契約の段階。株主に提示しているのは、将来「貸主」か「運営者」になれる可能性だ。

ビットコインマイナー株は、もはや同じ取引ではない

「ビットコインマイナー」という言葉は、今や異なるビジネスモデルを覆っている。レバレッジの効いたビットコイン連動が中心の企業もあれば、電力資産を使ってAI向けインフラ(データセンターなど)に踏み出す企業もある。成長の形、必要資本(設備投資)、評価の考え方はそれぞれ異なる。

企業投資家が買っているもの根拠次に必要なこと
IRENAIインフラへの転換GPU能力の拡大とAIクラウドの構想AI売上が企業価値に影響する規模になる必要
Riot電力資産と将来のデータセンター展開大規模拠点と送電網への接続インフラ優位を契約収入に変える
MARAビットコイン連動+AIの選択肢大きなBTC保有と採掘規模AI提携が収益を生むことを示す
CleanSpark効率的なビットコイン採掘運用力と低コスト電力戦略既存資産がAI需要にどう結びつくか示す

CleanSpark

CLSKは規律あるマイナーの一社だが、AI戦略は構想にとどまらなくなりつつある。電力と用地の保有を拡大し、既存インフラをAIやHPC(高性能計算:大量の計算を高速に行う用途)向けに位置づけている。拠点開発、賃貸、電力拡張の進捗として、ERCOT(テキサス州の送電網運用機関)の承認済み能力の追加やAI/HPC対応資産を挙げた。

強みは、電力と用地へのアクセスだ。新規のデータセンター開発会社が確保するには年単位を要する条件を、すでに持っている。さらに、資産を収益化する動きとして、サンダーズビル拠点での長期データセンター賃貸の発表もある。

課題は時間だ。AIインフラは、売上が伸びる前に大きな先行投資が必要になる。CleanSparkは、電力ポートフォリオが「契約に基づくAI/HPC収入」を生み、企業価値の見られ方を変える水準に届くことを示す必要がある。

Iris Energy Limited

IRENはAI転換を最も進め、ビットコイン採掘からAIクラウドインフラへ広げている。GPU(画像処理装置:AI計算で多用される半導体)能力に投資し、複数年のAIインフラ契約を締結した。データセンター拡張計画を通じ、マイクロソフト関連の需要に結びつくと報じられた提携も含まれる。今後数年でGPU群を大幅に拡大する計画も掲げる。

ただしトレードオフがある。採掘からAIへ能力を振り向ければ、AI収入が十分に立ち上がる前に、短期の採掘売上が圧迫され得る。

Riot Platforms

RIOTはインフラ面の説得力が高い。テキサス州でロックデール、コルシカナなど大規模拠点を運営し、AIやHPCに転用できる可能性のある電力能力を持つ。テキサス拠点で承認済み電力能力は合計1.7GW(ギガワット:1000MW)で、ロックデールには700MWの送電網接続がある。

さらに、AMDとの賃貸契約で主要なデータセンター顧客を初めて確保した。契約は当初25MW、期間10年、契約収入は約3.11億ドルが見込まれる。AMDは、重要IT負荷(critical IT load:実際にサーバー等が消費する電力)として最大200MWまで拡大できるオプションも持つ。

この契約はインフラ価値を裏付けるが、より大きな機会は、電力資産を長期のAI/HPC契約へどこまで転換できるかにかかる。需要があることは示した。残る電力能力へモデルを広げられるかが、企業価値の見られ方を変える。

MARA holdings

MARAは最も複雑だ。ビットコイン採掘、巨額のビットコイン保有、採掘以外のインフラ機会探索という3つを併せ持つ。

公開マイナーの中でも最大級のビットコイン保有を築き、保有BTCが投資テーマの重要部分になっている。ただし、大量保有は自動的に株主価値を生むわけではない。ビットコイン価格で貸借対照表(バランスシート)が大きく動き、拡張やインフラ投資のための資金調達も財務の自由度に影響する。

AIやHPCも検討しているが、専用AIインフラを構築する企業に比べれば段階は浅い。市場が求めるのは、「成長余地」ではなく契約収入を生む証拠だ。

ビットコインはAIと電力を奪い合う

この転換は、株価だけでなくビットコイン側にも意味がある。

マイニングから外れる1MWごとに、ネットワークを支える計算能力は減る。十分な数のマイナーが能力を振り替えれば、ハッシュレートの伸びが鈍化し、残ったマイナーは競争が緩む恩恵を受け得る。

ただし、すぐに起きる変化ではない。

ビットコインの安全性(セキュリティ:改ざん耐性)は、「安い電力の最も収益性の高い使い道はマイニング」という前提の上にあった。いまAIがより高い条件で競り落としに来ており、資金力も契約期間も勝る。明日すぐに壊れるわけではない。だが、安い電力を最も上手く使える事業者が「最高の顧客はビットコインではない」と判断し始めたなら、注視に値する。

ビットコイン連動度(相関)テスト

転換を測る方法の一つは、マイニング株がビットコイン価格にどれだけ連動(相関:一緒に動く度合い)し続けるかを見ることだ。

相関が強いなら、投資家が依然として「暗号資産の代替(プロキシ)」として見ている可能性が高い。相関が弱まるなら、AI期待、インフラ資産、個社要因など別の要素が株価を動かしているかもしれない。

ただし相関だけでは事業転換は証明できない。株式発行(増資)、市場全体のリスク選好、ビットコインの変動性(ボラティリティ)でも関係は変わる。より確かな材料は次のとおりだ。

  • 契約締結
  • 顧客名の開示
  • 投資計画の開示
  • 決算に売上として計上

この4社は同じラベルで呼ばれても、同じ企業ではない。電力インフラの物語へ寄る企業もあれば、AI計算ビジネスを作る企業もある。依然として主力がマイニングで、将来の転換を狙う企業もある。

  1. 発表した電力能力と、契約済み電力能力の違い――契約済みMWは「確定した数字」だが、協議中のMWはそうではない。TeraWulfやCipherで見られたように、AIテナントの賃貸契約に大企業のグーグルが後ろ盾として関与する場合、それはテナント単体の信用力(クレジット)では不十分だった可能性を示す。
  2. 転換の資金調達――大幅な希薄化(ダイリューション:新株発行で1株あたり価値が薄まること)や高い金利の借入は、結果が出る前に、資金提供者がリスクをどう見ているかを示す。
  3. ビットコインとの相関が変わるか――AIへ進むマイナーは、いずれコインと異なる値動きになる可能性があるが、当面は暗号資産の投資心理が株価に残りやすい。単独で判断せず、他の材料と合わせて読むべきだ。

投資判断は「ビットコインが上がるか」だけではない。ティッカー(株式コード)の裏にある事業モデルを見極めることが重要になる。

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