
概要
- 9月相場は、米労働市場とFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策が焦点。
- 7月の雇用統計が弱く、米景気の底堅さに疑問が出ている。一方、FRB高官発言を受け、引き締め継続観測も再燃。
- エヌビディアの決算はAI(人工知能)主導の株高を支えるが、米国債利回りの上昇はハイテク株の重しとなり得る。
- 米雇用統計、ISM(全米供給管理協会)景況指数、RBNZ(ニュージーランド準備銀行)とBoC(カナダ銀行)の政策決定が今週の主要材料。
9月相場、FRBに再び注目
9月入りの市場は、米労働市場の減速とインフレ再燃懸念の間で揺れている。
米国は7月に雇用者数が2万3,000人減少した。さらに、過去分の雇用者数(ペイロール=給与支払いベースの雇用者数)も合計10万3,000人下方修正された。失業率は4.1%で横ばいだったが、雇用指標の弱さは景気の強さと金利の先行きに疑問を投げかけた。雇用統計と金融政策の関係を把握することは、ニュースで為替を取引する際の判断材料になる(ニュース発表でFXを取引する5つの手順)。
同時に、エネルギー価格の上昇とFRB高官の最近の発言が、インフレ懸念をくすぶらせている。市場は、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)で追加利上げが検討され得るかを見極めるため、今後の経済指標に注目している。とりわけ金曜の米雇用統計が週の中心となる。政策観測の読み解きは、金利見通し(市場が織り込む将来の政策金利の予想)の取引方法が参考になる。
米雇用統計が地合いを左右
金曜発表の8月雇用統計(非農業部門雇用者数=農業以外の雇用の増減)は、9月FOMCを前に労働市場を測る最大の材料となる。7月は雇用者数が2万3,000人減と予想を大きく下回り、過去分も大幅に下方修正されたことで、雇用の勢いが鈍っているとの懸念が強まった。
8月の市場予想は控えめで、調査によって2万5,000〜5万8,000人程度と幅がある。失業率は4.1%近辺が見込まれる。上振れなら米金利高観測が強まり、ドルや米国債利回り(米国債の利回り=債券価格と逆に動く金利指標)を支える可能性がある。不透明局面でDXY(ドル指数=主要通貨に対するドルの強さを示す指数)が上がりやすい理由は、不確実な市場でDXYが上昇する理由に整理されている。逆に下振れなら、利下げ観測が強まりやすく、ドル安・利回り低下につながり得る。
週前半にも材料が多い。JOLTS(雇用動態調査=求人件数などで労働需給を示す統計)、ADP(民間雇用統計=民間給与データを基にした雇用推計)、ISM景況指数(企業への調査で景気の強弱を示す指標)が、金曜の雇用統計に向けた見方を動かし得る。強弱が混在する指標の読み方は、経済指標がまちまちのとき投資家はどう動くべきかが参考になる。
金(ゴールド)は「景気減速」と「インフレ」の綱引き
金相場は9月、相反する力を受ける。労働市場の弱さが鮮明になれば、金融緩和観測(利下げや引き締め停止の見方)が強まり、利回り低下を通じて金を支えやすい。一方、インフレ圧力が強いままだとFRBは慎重姿勢を崩しにくく、米国債利回り上昇やドル高が金の重しになる。実質金利(名目金利から期待インフレ率を差し引いた金利)と金の関係は、米国債利回りと金:なぜ実質金利が注目されるのかにまとめられている。
原油高も難しさを増す。エネルギーコスト上昇はインフレ期待を押し上げ、景気が鈍っても中央銀行が利下げしにくくなる。原油価格に影響する要因は、原油価格を動かす10の要因を参照したい。
最新のVT Marketsレポートのテクニカル(価格チャートから需給を読む分析)では、注目水準が示されている。金は監視していた4,670付近から下方向に推移しており、4,490が下値の目安(サポート=下げ止まりやすい水準)として挙げられる。4,773.46を上回れば、上値余地に再び注目が集まり得る。継続的な見通しは、XAUUSD(ドル建て金)の見通しと分析が参考になる。
カギは、米指標が金融政策見通しを動かすほど強いか弱いかであり、それが金の方向性を左右する。
AIが株式市場を下支え
米株は、テクノロジー企業の好決算とAI投資の継続が支えとなっている。エヌビディアは四半期売上高が962億ドルと前年同期比106%増に達し、データセンター売上高は890億ドルとなった。次四半期の売上高見通しは約1,080億ドル。背景は、エヌビディア株の分析と見通しで確認できる。
この結果は、大手テック企業がAI支出を減速させるのではないかという懸念を和らげた。エヌビディアは供給制約(供給が需要に追いつかない状態)が2028年度まで続く可能性を示し、AIインフラ需要の強さを示唆した。テックへの分散投資手段であるテクノロジーETF(上場投資信託=株式のように売買できる投信)の基本は、テクノロジーETFの仕組み・利点・リスクにまとめられている。
もっとも、米国債利回り上昇は、テック株のバリュエーション(株価評価=利益に対して株価が高いか低いか)を圧迫し得る。強い指標により利下げ観測が後退し、FRBがタカ派(引き締めに前向き)と受け止められると、AI好決算の追い風は金融環境の引き締まりで一部相殺される。
S&P500とナスダックは、企業業績の勢いは強い一方、金利環境は厳しさを増して9月を迎える。指数取引の基本は、NAS100(ナスダック100)現物の取引方法とS&P500取引ガイドで確認できる。
中銀イベントが変動を増幅
今週は米国だけでなく、他の中央銀行(政策金利を決める当局)も注目される。RBNZは政策金利(オフィシャル・キャッシュレート=中銀が誘導する短期金利)を25bp(ベーシスポイント=0.01%)引き上げて2.75%とする見方が優勢で、追加利上げの示唆に注目が集まる。
BoCは政策金利(オーバーナイト・レート=翌日物金利の誘導目標)を2.25%で据え置く予想。ロイター調査では、回答したエコノミスト35人全員が据え置きを見込んだ。為替への影響を追うには、米ドル/カナダドルの見通しが参考になる。
政策見通しの違いは、NZドルとカナダドルの変動を大きくし得る。ガイダンス(先行きの説明)が市場の織り込みとずれるほど値動きは荒くなりやすい。9月は主要指標と政策決定が重なり、為替、債券、株、金にとって重要な月となる。
注目シンボル
USDX | NAS100 | SP500 | XAUUSD | BTCUSD
主な予定
| 日付 | 通貨 | イベント | 予想 | 前回 | アナリストコメント |
| 9月1日 | USD | ISM製造業PMI(購買担当者指数=企業の景況感を指数化) | 55.2 | 55.6 | 下振れなら、米製造業の見通し悪化を通じてドルの重しになり得る。 |
| 9月2日 | AUD | GDP 前期比(q/q=前四半期との比較) | 0.30% | 0.30% | 下振れなら、豪景気の減速観測から豪ドルの重しになり得る。 |
| 9月2日 | NZD | 政策金利(Official Cash Rate) | 2.75% | 2.50% | 予想以上の利上げなら、RBNZの引き締め観測が強まりNZドルを支え得る。 |
| 9月2日 | CAD | 翌日物金利(Overnight Rate) | 2.25% | 2.25% | サプライズ利下げなら、追加緩和観測が強まりカナダドルの重しになり得る。 |
| 9月4日 | CAD | 失業率 | 6.40% | 6.40% | 上振れなら、労働市場悪化懸念からカナダドルの重しになり得る。 |
| 9月4日 | USD | 失業率 | 4.10% | 4.10% | 上振れなら、FRB利下げ観測が強まりドルの重しになり得る。 |
今週の主な値動き
USDX

- USDXが持ち合い(レンジ)を続けるなら、99.15付近の値動きに注目。
- 上昇する場合は、99.80付近の値動きを確認。
EURUSD

- EURUSDが上昇基調なら、1.1640付近での上値の重さ(反落のサイン)に注目。
- 下落する場合は、1.1530付近の値動きを確認。
GBPUSD

- USDXが持ち合いを続けるなら、99.15付近の上向きの値動きに注目。
- USDXが上昇する場合は、99.80付近の値動きを確認。
USDJPY

- USDJPYが上昇基調なら、160.20付近の上向きの値動きに注目。
- 160.871を上抜けた場合、上方向の値動きを確認。
XAUUSD(金)

- 金が下落基調なら、4355付近での下げ止まりのサインに注目。
- さらに下落する場合は、4270付近での反発(コレクション=行き過ぎの修正)兆候を確認。
SP500

- SP500が下落を続けるなら、7625付近での反発サインに注目。
- 売り圧力が続く場合は、7565付近の反発サインを確認。
BTCUSD

- ビットコインが上昇する場合、82,834.21(直近高値=スイングハイ)を上抜けた後の値動きを確認。
- 下落する場合は、75,170と72,120付近の値動きに注目。
結論
9月相場は、米景気が緩和を正当化するほど減速しているのか、それともインフレとエネルギー高でFRBが慎重姿勢を続けるのかが焦点となる。今週の最大材料は米雇用統計で、ISM、JOLTS、RBNZ、BoCも為替・金・株の変動要因となり得る。AI関連の好業績は米株を支えるが、次の方向は金利見通しの織り込み方に左右されやすい。
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