この回は、恒常的な連邦財政赤字と国債残高の増加がインフレ・リスクを高め、貴金属への追い風になり得ると論じている。市場は、緩やかに積み上がる財政圧力について、ドルへの信認や政府の資金調達能力に影響が及ぶ段階まで見て見ぬふりをしがちだ、という見立てだ。超党派政策センター(Bipartisan Policy Center)が「大幅に高水準の連邦債務が常態化するとの予想は、米国の信用力を損ない得る」と警告している点にも触れ、国債需要の軟化が利回り上昇につながり得ると説明。ホストは、債券利回りが2001年以来の水準に達しているとも述べる。さらに、財政規律の弛緩は超党派的な現象だと位置づけ、カルビン・クーリッジ以降のすべての大統領が、就任時よりも多い国債残高を残して退任してきたと語る。
インフレについては、赤字財政が借り入れ拡大と債務のマネタイズ(貨幣化)を招き、戦争などの要因と並んで物価上昇圧力を強め、時間をかけて家計の購買力を侵食する、という経路を提示。インフレ目標2%を前提に、ドルの購買力は5年で約10%、10年で約20%失われるとして、これを「インフレ税」と表現する。そのうえで「通貨希薄化(debasement)トレード」を実物資産に結び付け、中国の金購入をドル・エクスポージャー低減の動きとして例示。財政のひずみはゆっくりと蓄積する一方、環境の引き締まりは突然訪れ得る、との見解で締めくくる。
金利上昇と通貨価値の希薄化に備えたポジショニング
連邦政府の借り入れが急拡大する中、金利デリバティブの持続的なボラティリティ上昇に備えてポジションを構築する必要がある。米国の国債残高が36兆ドルを超え、年間財政赤字が1.8兆ドル近辺で推移するなか、債券利回りには構造的な上昇圧力がかかる。投資家需要の弱含みに備えるには、イールド上昇を見込む戦略(ロング・イールド)や、長期国債先物に対するプット・オプションの活用を検討すべきだ。
通貨価値の希薄化を収益機会に変えるには、向こう数週間で貴金属のコール・オプションを通じたロング・エクスポージャーを積み増すことを検討したい。中銀買いが近時、金価格を1オンス当たり2,700ドルの過去最高水準超へ押し上げており、海外勢が準備資産を紙資産からシフトしている。金・銀先物でコール・スプレッドを用いれば、下方リスクを厳格に限定しつつ、このモメンタムを取り込める。
また、持続的なインフレは時間をかけてドルの購買力を削るため、為替ポジションのヘッジも不可欠だ。歴史的には、長期の財政赤字は政府に債務のマネタイズを迫り、海外の資金提供者がより高いリスク・プレミアムを要求し始める局面で通貨安につながりやすい。非ドル通貨のコールや、コモディティ連動資産を通じたポジションは、法定通貨に対するショックの緩衝材となる。
ボラティリティ管理とポートフォリオ防衛
市場の変化は当初は緩慢でも、その後に不意に加速することが多い。過去の債務上限問題や予算危機の局面でみられた米国債市場のボラティリティは、その典型例だ。主要な金利・コモディティ・デリバティブを対象に、アウト・オブ・ザ・マネーのボラティリティ契約を購入することで、テールリスク保険を保有することを推奨する。いまの段階で厳格なリスク管理を設定しておけば、突然の市場再評価が起きる前に防御力を確保できる。
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