DBSグループ・リサーチは、米ドル/フィリピンペソ(USD/PHP)の2026年末見通しを57.8から62.7へ引き上げた。これは「オペレーション・エピック・フューリー」がホルムズ海峡の封鎖と重なった1カ月後にUSD/PHPが初めて60を上抜けたことを受けたもの。これに伴うエネルギー価格の上昇と供給混乱がフィリピンの対外収支に波及しており、輸入する湾岸原油への依存が、貿易赤字の過去最大水準への回帰と結び付いている。
インフレも急加速している。4月のCPIは前年比7.2%・前月比2.6%と、3月の前年比4.1%・前月比1.4%から大きく上振れた。これを受け、フィリピン中央銀行(BSP)は2月19日の25bp利下げを事実上撤回する形で、4月23日に25bp利上げし政策金利を4.50%とした。BSPの5月インフレ見通しは7.1~7.9%で、目標レンジ(2~4%)をなお大きく上回っている。
Persistent Peso Weakness and Policy Risks
ペソが62.7まで下落するとの予想に修正されたことを踏まえると、抵抗の少ない方向は一段のペソ安だと考える。今後数週間はUSD/PHPのロング構築を検討する。高油価と貿易赤字拡大という根本的な圧力が短期的に緩和する可能性は低い。
直近5月のインフレ率は7.8%となり、中銀予測レンジの上限近くに着地したことで懸念を裏付けた。この持続的な物価圧力は公式目標(2~4%)の2倍超であり、BSPに追加利上げを迫る構図だ。追加引き締めをためらえば政策対応の失敗と受け止められ、ペソ安が加速する可能性が高い。
Volatility, Growth Constraints, and Diminishing Carry Appeal
ペソ弱気の見方を表現する手段としては、インプライド・ボラティリティが急上昇していることからオプションの活用を選好する。例えば、1カ月物のUSD/PHPインプライド・ボラティリティは足元で10%を上回り、2022年のグローバルショック以来の水準に跳ね上がった。短期のUSD/PHPコールを購入すれば、不確実性が高い環境下でも最大損失を限定しつつ上方向の値幅を狙える。
BSPは国内成長の鈍化に制約され、いまだ「後手」に回ると予想する。直近データでは2026年1~3月期の実質GDP成長率が4.1%へ減速しており、2022年のような急ピッチ利上げサイクルをなぞる余地は限られる。インフレ抑制と脆弱な景気下支えの板挟みは、対ドルでのペソの相対的な弱さにつながりやすい。
直近の利上げにもかかわらず、キャリートレード対象としてのペソの魅力は急速に薄れている。1週間で金利収益の数カ月分を相殺し得る通貨下落リスクが、今や多くの投資家にとって過大となっているためだ。こうしたポジションの巻き戻しが観測されており、現物市場でのPHP売り圧力をさらに強めている。
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