ラボバンクは、米ドルが2つの方向から引っ張られていると指摘する。すなわち、中東リスクに関連した安全資産需要と、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策見通しの再評価だ。同行は、米・イラン和平合意に向けた見通し改善や、ホルムズ海峡の再開の可能性が、USDへのディフェンシブな資金流入を弱め得る要因だとする。一方で、新FRB議長ウォーシュ氏が市場予想以上にタカ派的な姿勢を示したことが下支えになったという。これらの材料が昨晩遅くに同時にぶつかったと同行は述べ、米国とイランの了解覚書(MOU)がFRBの政策会合とほぼ同時に出た点を挙げた。併せて、今朝のドル指数(DXY)は上昇して取引されていたと付け加える。
チームは、戦争初期におけるドル高を「安全資産」としての地位を裏付けるものと評する一方、2025年4月にトランプ大統領が関税を巡る演説を行った後に、ドルと米国債がそろって下落したことで、その見方が疑問視されたとも述べる。先行きについてラボバンクは、利上げ期待が後退する場合にUSDの下振れリスクがあるとし、今年は金利を据え置くという基本シナリオを改めて示した。対照的に、市場の織り込みは6カ月先で約40bpの引き締めを示唆している。
市場予想と経済ファンダメンタルズの乖離
現在のドル高は、ファンダメンタルズというよりも、新FRB議長のタカ派的なトーンにより強く左右されているように見える。市場は、基礎的な経済データが裏付けない可能性がある利上げを織り込み、先走っていると当社はみている。これは、市場の想定と年末まで金利据え置きが続くという当社見通しとの間に、明確な乖離を生んでいる。
この見立ては、2026年5月の最新インフレ統計でコアインフレ率が3.4%へ鈍化し、FRBが強硬に動く緊急性が低下したことによって裏付けられる。さらに、直近の雇用統計では小幅な減速が示され、雇用者数の伸びが和らぎ、失業率は4.0%に上昇した。いずれも、FRBを急ピッチな引き締めサイクルに追い込むような過熱局面の兆候とは言い難い。
ドル取引における機会とリスク
デリバティブ取引にとっては、オプション市場での機会を示唆する。当社は、今後数週間にわたり、ドル指数(DXY)のプットオプション、あるいはAUD/USDなどの通貨ペアのコールオプションを買う戦略に妙味があるとみる。今後の経済指標が景気減速傾向を確認し、FRB見通しの再評価を迫る場合に想定されるドル下落に対して、低コストでポジションを構築できるからだ。
より直接的にこの見通しを取引する方法としては、金利先物がある。先物市場では9月会合までに少なくとも1回、25bpの利上げが行われる確率が70%超と織り込まれている。これに反するポジションは、市場がより忍耐強いFRB像へと収れんするにつれ、収益機会となり得る。
過去にも、FRB政策を市場が先回りして織り込み、その後に失望して急反転する局面が見られた。地政学面では、イランとの緊張緩和がドルを支えてきた「安全資産買い」を後退させつつある。結果としてドルは脆弱となり、当社が「行き過ぎ」とみる金利見通しにのみ依存する構図になりつつある。
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