インド・ルピー(INR)は2026年に入り対ドルで急速に下落しており、原油高、ポートフォリオ流出、ドル高が重しとなっている。年初来でINRは約6%下落し、5月には97.00をわずかに下回る史上最安値を付けた。その後、USD/INRは反落して概ね94.50~96.00のレンジに戻っている。インド準備銀行(RBI)は、急激な利上げに依存するのではなく、海外からの資本流入を呼び込む措置を通じてINRを下支えしようとしている。
金融政策面では、RBIは6月上旬に政策金利(レポレート)を5.25%に据え置くことを全会一致で決定し、中立スタンスを維持した。中東情勢の悪化や天候要因が成長・インフレに与える影響を見極めているものの、リスクバランスは引き締め方向に傾きつつある。年内に25bpの利上げが実施されれば、政策金利は5.50%となる。インドの外貨準備高は約6,890億ドルで、輸入の約10カ月分に相当する。RBIの為替介入に加え、今後見込まれる資本流入が、目先の通貨下落を抑制すると予想される。
ルピーの安定とボラティリティ戦略
インド・ルピーは、5月に対ドルで97.00近辺の史上最安値を付けた後、足元では一定の安定を取り戻している。RBIによる大規模な市場介入と、約6,890億ドルに達する潤沢な外貨準備高が、現在の落ち着きの主因とみている。USD/INRの1カ月物インプライド・ボラティリティは、5月の急落局面で8.5%超だった水準から、より安定的な6.2%へ低下しており、環境の変化を映している。
RBIが積極的に市場に関与していることを踏まえると、当面のUSD/INRは94.50~96.00のレンジ内にとどまる公算が大きい。これは、オプションのボラティリティを売る戦略が有効となり得ることを示唆する。例えば、この想定レンジの外側に権利行使価格を置いたストラングルを売ることで、通貨ペアがレンジ内で推移する間にプレミアムの獲得を狙える。
下振れリスクと政策の注視点
こうした一時的な安定にもかかわらず、ルピーに対する基調的な下押し圧力は依然として残っている。ブレント原油が1バレル115ドルを頑強に上回って推移し、米ドル指数(DXY)が107.50を上抜ける中、リスクはなおINR安方向に偏っている。限定的なリスクでこの見通しを表現するには、例えば96.00コールを買い、97.50コールを売るといったコール・スプレッドを用い、いずれレンジを上放れる局面に備える手法が考えられる。
RBIは年内の利上げを示唆しているが、当面は金利を5.25%に据え置いている。このため、来週発表の消費者物価指数(CPI)が重要となる。市場は前年比7.9%を見込んでいる。インフレ率が予想を上回れば、RBIが想定より早期に行動を迫られ、USD/INRの上昇圧力(ルピー安)を短期的に強める可能性がある。
ポートフォリオ流出も引き続き通貨の重しであり、2013年の「テーパータントラム」に類似した、世界的な不確実性が高い局面で過去に観察された動きと重なる。海外機関投資家(FII)はインド株を5週連続で売り越しており、5月初からの流出額は合計42億ドル超に達する。したがって、輸入企業には、足元の安定局面を活用して、今後数カ月分のドル建て支払債務のヘッジを進めることを推奨する。
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