米国株は、コア指標の鈍化よりも、総合インフレ率の上振れとホルムズ海峡を巡る地政学リスク再燃が重しとなり下落した。ダウ工業株30種平均は約1.2%安と、約600ドルの急落で、約5万0,250ドル弱で終了。場中には約5万0,150ドル近辺まで下げた。この動きは、5万1,400ドル近辺での過去最高値引け以降で最大の1日下落となり、5月CPIが概ね予想に沿った内容だったにもかかわらず売りが優勢となった。総合CPIは前月比0.5%上昇、前年比4.2%上昇と、年率では2023年4月以来の高水準(1月の2.4%から上昇)。エネルギーは前月比で約4%上昇し、上昇分の6割超を占めた。ガソリン価格は前年比でおよそ40%上昇した。コアCPIは前月比0.2%上昇と、予想の0.3%前後を下回り、コア前年比は2.9%。関税コストの転嫁が一服したことでコア財価格は下落した。WTIは再び1バレル=90ドル近辺に戻り、ブレントは93ドルに接近した。
米連邦準備制度理事会(FRB)は来週会合を開き、市場は据え置きを織り込む。注目は年末利上げの可能性で、ミシガン大学(UoM)のインフレ期待が5%に近づくなか、1年先指標は直近で4.8%だった。木曜12:30 GMT発表の5月PPI(生産者物価指数)は前月比0.7%上昇(4月は1.4%)が予想され、前年比は6.4%近辺。コアPPIは前月比0.5%前後、前年比5.4%程度が見込まれる。新規失業保険申請件数は22.5万件から21.9万件程度への減少が予想される。テクニカル面では、ダウは4月の約4万5,000ドルから上昇しており、50日指数平滑移動平均(EMA)の約4万9,700ドルは上回っているものの、約5万0,350ドル近辺からの戻りは維持できず、5万0,800ドル手前で失速。寄り付きは5万0,900ドル手前だったが、弱い引けとなった。上値の節目として5万0,750ドル、5万0,900ドルが挙げられる一方、5万0,150ドルを割り込んで引ければ、5万0,000ドル、次いで4万9,700ドルが意識される。
地政学リスクとボラティリティ再燃
市場は、丁寧なディテールではなく主要リスクに焦点を当てるよう促している。コアインフレが弱めでも、地政学リスクが再び主導権を握り、ダウは数週間で最大の下落となった。良好な経済指標が下支えになっておらず、価格を実際に動かしている要因――すなわち紛争――に備えたポジショニングが必要だ。
注目は原油価格と、それが市場に意味するものだ。WTIが1バレル=90ドル近辺に戻り、ホルムズ海峡通過に関する海上保険料が過去48時間で3倍に跳ね上がったとの報道もあるなか、「エネルギー税」の負担は現実のものとなり、拡大している。これは、年後半にインフレが沈静化するとの前提に立つ予測を正面から脅かす。
この環境はボラティリティ上昇に適している。先週14近辺だったCBOEボラティリティ指数(VIX)はすでに18を上回っており、緊張が直ちに緩和しない限り、さらに上昇余地があるとみる。7月満期で行使価格22または25のVIXコールを買うことは、市場の恐怖が急伸する局面へのヘッジ、あるいは収益機会として、直接的かつ有効な手段となり得る。
リスクに備えるポジショニング:株式と経済指標
方向感としては、ダウ(DJIA)のプットを購入し、現行水準を下回るゾーンをターゲットにする。5万0,150ドルを明確に割り込めば、心理的節目の5万0,000ドル、さらに50日移動平均の約4万9,700ドルが視野に入る。経済指標よりも戦争リスクを明確に織り込む市場に対し、これらのプットは必要な防御策と位置づける。
今朝の5月PPIは警戒を裏付け、前月比0.8%上昇と予想を上回った。エネルギーコストに起因する川上の物価圧力は、来週の会合を前にFRBの手足を縛る。原油価格が上昇を続けるなら、市場に対する金融面のクッションは期待しにくい。
今週最後に注視するデータは、あす発表のミシガン大学の消費者信頼感調査だ。家計のインフレ期待(直近4.8%)は重要で、1980年代初頭の高インフレ期以来の水準が意識される局面に近づいている。5%以上となれば、FRBのタカ派姿勢を補強し、株式の下押し圧力を一段と強める可能性がある。
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