中東情勢の緊迫化を受け、金価格は火曜日に約2%下落した。ドナルド・トランプ大統領が、ホルムズ海峡付近でイランが米国のヘリコプターを撃墜したことに対し米国が対応すると述べたことで緊張が高まった。XAU/USDは4,250ドルを下回って推移し、日中で1.93%安。一方、ボラティリティ指数(VIX)は15%上昇した。ニューヨーク・タイムズは、米国とイランがテヘランの核濃縮計画に関連する4つの論点の調整を進めており、停戦合意への道筋が開ける可能性があると報じた。
米経済指標では、オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)が、4週移動平均が3.575万人から2.9万人へ減速したと示した。市場は5月の消費者物価指数(CPI)に注目しており、総合CPIは前年比4.2%(前回3.8%)が予想され、コアCPIは2.9%(前回2.8%)が見込まれている。スワップ市場は2026年末までにFRBが23bpの追加引き締めを行う可能性を織り込む一方、米10年国債利回りは3.5bp低下して4.532%、ドル指数(DXY)は0.09%安の99.91となった。テクニカル面では、スポットは200日SMAの4,440ドルを下抜けた。サポートは4,268ドル、次いで4,200ドル、4,098ドル、4,000ドル。レジスタンスは4,440ドル、4,500ドル、4,550ドル、50日SMAの4,619ドル、100日SMAの4,788ドルが挙げられる。中央銀行は2022年に金を1,136トン(約700億ドル相当)積み増した。
金価格を動かす地政学・市場要因
金価格は大きく下落しており、地政学リスクが金を押し上げるという通常のパターンが崩れている。VIXは15%急伸したものの、米・イラン合意の可能性を巡る相反する報道を市場が天秤にかけているため、金の支えにはなっていない。この不確実性は、市場が単純な「安全資産需要」以外の要因で動いていることを示唆する。
焦点は今後発表される米インフレ指標に移った。直近(2026年5月)のCPIは4.1%と、予想をわずかに下回ったものの高止まりしており、FRBへの圧力は続く。インフレの粘着性は、FRBが「高金利を長期化」させるとの見方を強め、利息を生まない金にとって大きな逆風となる。
テクニカル見通し、取引戦略、長期ファンダメンタルズ
テクニカルは明確に弱気に転じており、200日移動平均(4,440ドル)割れは、さらなる下落を見込みやすい強いシグナルとみる。RSI(相対力指数)は下落ペースを速めており、売り方優勢を示唆する。次の主要サポートとして、短期の価格目標になり得る4,200ドル水準が意識される。
ボラティリティが急上昇していることを踏まえると、今後数週間はプットオプションの買いが妥当な戦略となり得る。この手法は、最大損失を限定しつつ、4,200ドル、さらには4,100ドル近辺までの下押し局面で下落益を狙える。ニュースフローが極めて不確実な局面では、オプションの「リスク限定」という特性が一段と有効となる。
もっとも、短期的に弱気でも、長期ファンダメンタルズは中央銀行の買いによって下支えされている。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によれば、2026年1-3月期に世界の中央銀行は準備資産としてさらに290トンを積み増した。こうした継続的な買いは需要の下値を形成し、急激な売りを和らげる可能性がある。
また、金が下落する一方で米国債利回りも低下するという、相関の崩れにも注目している。これは市場の関心が、FRBによる高金利長期化の脅威に強く偏っていることを示し、同時に米ドル高圧力にもつながっている。市場がFRBのタカ派姿勢を織り込み続ける限り、金は上昇よりも下落のほうが起こりやすい展開となりそうだ。
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