ダウ工業株30種平均は木曜日、原油価格の上昇と金利(国債の利回り)の上昇を受けて一時4万9700ドル前後まで下落した。その後、イラン国営メディアが「アルアラビーヤ」を引用し、「パキスタンの仲介により米国・イラン間で最終合意案に到達し、数時間以内に発表される可能性がある」と報じたことを受け、5万ドルを上回って急伸し、5万0350ドル前後まで上昇した。
原油価格が100ドル(3桁)に近づく動きは、インフレ率(物価上昇率)を前年同月比で約4%まで押し上げ、目標の2%を上回る状態が続く一因となっている。フェデラルファンド(政策金利)の先物市場(将来の金利を織り込む市場)では、米連邦準備制度理事会(FRB)が2026年末まで金利を据え置くとの見方が織り込まれつつ、利上げの可能性が高まっている。
イラン合意報道に対する市場の反応
報道前には、米10年国債利回りが4%台半ばに戻る動きを見せ、30年固定住宅ローン金利は約7%近辺まで上昇し、昨夏以来の高水準に近づいた。米経済指標は強弱まちまちで、住宅着工件数は底堅い一方、新規失業保険申請件数は約20.9万件と低水準にとどまった。しかし、フィラデルフィア連銀製造業景況指数(製造業の景気感を示す調査)はマイナス圏へ落ち込んだ。
3月と4月に設定されたとされる過去の期限はずれ込んだと報じられており、停戦が宣言されても破られる展開があったという。パキスタンの陸軍トップがテヘランへ向かうとも報じられた一方、核開発の凍結期間(核関連活動をどれだけ止めるかの期間)をめぐって米国とイランの隔たりは残っている。
先週、市場は米国・イラン和平合意の可能性を示す見出しを受けて急速に流れを変えた。弱含んでいたダウは、5万ドルの節目を一気に上回った。これは、インフレを高止まりさせてきた紛争が緩和(緊張が和らぐこと)するとの見通しに対する反応だった。
取引アイデアとヘッジ(損失回避)に関する考慮点
今回の中心は原油であり、過去1年のインフレ圧力(物価を押し上げる力)の主因となってきた。すでに米WTI原油(米国の代表的な原油価格指標)は、直近高値の1バレル95ドル近辺から発表後の数日で約82ドルへ、10%超下落している。派生商品(デリバティブ:株や商品などを元にした契約)を取引する投資家にとって、合意が維持されるなら、エネルギー株ETF「XLE」のプット(下落に備える売る権利)や、原油先物のコール・スプレッド売り(上昇局面の利益を限定しつつ、上値の保険料を狙う取引)が選択肢となり得る。
ただし、この上昇はまだ署名に至っていない合意を前提にしており、過去にも同様の見出しで期待外れとなった経緯がある。CBOEボラティリティ指数(VIX:米株の値動きの大きさの見込みを示す指標)は15を下回り、市場の警戒感が薄れている可能性がある。合意が崩れた場合の急反落に備えるなら、ダウやSPY(S&P500連動ETF)のアウト・オブ・ザ・マネーのプット(現在値から離れた安いプット)を購入し、下落リスクを抑える手段が考えられる。