中東情勢の緊迫化と製油所(原油をガソリンなどに精製する施設)の制約が、原油価格を押し上げている。アジア時間の取引開始時点で、ブレント原油は2%上昇した。背景には、UAE(アラブ首長国連邦)の原子力施設へのドローン攻撃、米国との協議停滞、パキスタン・カタール・イランによる「シャトル外交」(各国間を行き来して調整する外交)がある。
パリで開かれたG7財務相会合では、ブレント原油が1バレル=110ドルを試す展開が焦点となった。航空便の停止懸念や、製油能力(精製できる量)の上限も意識された。
Uae Supply Disruptions And Export Rerouting
地域紛争の影響で、UAEの原油生産量は日量300万バレル超から日量180万〜210万バレルへ減少した。UAEは、OPEC/OPEC+(産油国機構とロシアなど非加盟産油国の協調枠組み)に関する方針見直しを進めると同時に、ホルムズ海峡を回避する輸出ルートの拡大も進めている。
米国は、ロシア産原油の一部取引を認めていた制裁免除(制裁の適用を例外的に外す措置)の期限切れを容認し、イラン戦争に伴う世界的な需給逼迫の中で一時的に緩んでいた制限が終了した。ロシア産・イラン産原油に関わる米国の制裁免除も、期限が迫っている。
アブダビは、西—東パイプライン計画を前倒しし、2027年までに輸出能力を倍増させる方針だ。これはホルムズ海峡を避け、輸出の安定性を高める狙いがある。
7月限のブレント原油先物(将来の受け渡しを約束して売買する契約)が110ドルを上回るなか、供給不安が相場を下支えしている。UAEでのドローン攻撃とイランを巡る紛争が、価格の下値を固めている。米エネルギー情報局(EIA)の最新統計では、前週に世界の在庫が320万バレル減少しており、供給がタイト(余裕が小さい)だという見方を補強した。
Options Positioning For Higher Prices
ロシア産・イラン産原油の一部販売に対する米国の制裁免除の期限切れは、相場押し上げ要因となる。これにより、合法的に取引できる世界市場から日量約110万バレルが実質的に減る見込みだ。これは「強気材料」(価格上昇を促す材料)であり、2022年の侵攻後に導入された制裁直後に近い状況となる。市場はこの政策変更の影響を十分に織り込んでいない可能性がある。
UAEの生産減少で日量200万バレル前後にとどまっていることは大きな懸念材料だ。OPEC+から距離を置く戦略転換は、独自路線による不確実性を高める。こうした警戒は、CBOE原油ボラティリティ指数(OVX、原油オプション価格から将来の変動幅を推計した指標)にも表れており、指数は6カ月ぶり高水準の58へ上昇した。これは、市場が大きな値動きを想定していることを示す。
こうした状況を踏まえると、7〜8月満期のWTI(米国の代表的な原油価格指標)とブレントのコールオプション(一定価格で買う権利)で、上昇局面に備える戦略が意識される。例えば「ブル・コール・スプレッド」(コールを買い、より高い行使価格のコールを売ってコストと利益を抑える手法)として、ブレントで115ドルのコールを買い、125ドルのコールを売る組み合わせは、コストを抑えつつ上昇を狙い、リスク(損失の最大額)を限定できる。次の上昇局面の主な引き金は、中東情勢のさらなる悪化となり得る。