
概要
- 米ドルは上値が重い。ドル指数(USDX=主要通貨に対する米ドルの強さを示す指数)は99.80近辺が上値抵抗(上げにくい水準)となり、下値の目安は98.95と98.70。
- ドル円(USDJPY=米ドル/円)は世界市場のリスク要因。上昇した場合、次の注目水準は160.15。
- 金(XAUUSD=金/米ドル)は強気の形を維持。もみ合い(方向感が出にくい動き)局面では4,320と4,250を注視。
- 今週はカナダCPI、英国CPI、FOMC議事要旨(米連邦公開市場委員会の会合内容をまとめた文書)に注目。物価(インフレ)、金利、為替の方向性の手掛かりとなる。
円安で「資金の流れ」が焦点に
円は、複数市場にまたがるリスクの主要因の一つ。ドル円は160円付近で推移しており、テクニカル(過去の値動きから水準を判断する分析)では、上昇が続く場合の次の注目点として160.15が意識される。
円の問題は為替だけにとどまらない。円は、海外投資家にとって代表的な「調達通貨」(低金利で借りやすい通貨)。日本の借入金利が低いため、円で資金を借りて、利回りの高い資産へ投資する「キャリートレード」(金利差を狙う取引)が成り立ちやすい。円が急に持ち直すと、「レバレッジ取引」(借入などで資金を膨らませる運用)の解消が進み、株式、暗号資産などリスク資産に売り圧力がかかる恐れがある。
最近の米日当局による「為替介入」(当局が市場で通貨を売買して相場を動かそうとする行為)は一時的に円を支えたが、根本では日米の金利差が引き続き重要だ。介入後に円が再び下落したことから、介入だけで相場の流れを長く変えるのは難しいとの見方が強まっている。
そのため、ドル円は「方向」だけでなく「動く速さ」が重要となる。緩やかな下落なら投資家は調整の時間を確保できる。一方、急落すればキャリートレードの解消が進み、市場全体で「デレバレッジ」(借入を減らし、建玉=保有ポジションを圧縮する動き)が起きるリスクが高まる。
日銀と米連邦準備理事会(FRB)が鍵を握る。日米金利差がゆっくり縮小すれば、円は無理のない形で上昇しやすい。日本の金融政策引き締め(利上げなど)と米国の金融緩和(利下げなど)が同時に速いペースで進めば、保有ポジションの強制的な縮小につながるリスクが増す。
ドル安で下値余地
USDXは、下落に向かう前にもみ合う可能性がある。99.80近辺の戻りの弱さが焦点で、下方向なら98.95、98.70を注視。
米国の最近の経済指標を受け、FRBが追加利上げを進めるとの見方は後退した。インフレの鈍化と小売の弱さが米国債利回り(国債の利回り=金利の代表指標)を押し下げ、ドルの支えを弱めている。
次の大きな政策材料は、8月20日に公表されるFOMC議事要旨。7月28〜29日会合分が米東部時間午後2時に公表予定。
焦点は、当局者がインフレ、景気、金利の道筋をどう見ているか。タカ派(利上げに前向き)色が弱ければドル安圧力が増す一方、インフレ再燃への警戒が強ければ99.80付近でUSDXを支える可能性がある。
ユーロドル(EURUSD=ユーロ/米ドル)は1.1600付近で上値が抑えられている。もみ合いが続くなら、1.1530近辺の底堅さが次の注目点。上抜けが続く場合は1.1635が焦点となる。
英国インフレがポンドの方向を左右
ポンドドル(GBPUSD=英ポンド/米ドル)は、もみ合いならテクニカル的に底堅い。1.3495付近を注視。
ポンドの最大材料は8月19日の英国CPI(消費者物価指数=家庭が購入する商品・サービス価格の変化)。市場予想は前年比2.9%(前回2.6%)。エネルギーコスト上昇が物価見通しを押し上げるとの見立てだ。
予想を上回る結果なら、金融緩和(利下げなど)観測が後退し、ポンドを支えやすい。下振れなら逆に、英金利低下観測が強まりやすい。
したがって、指標は単独で判断せず、GBPUSDの1.3495というテクニカル水準と合わせて見たい。
金は重要な下値水準の上で推移
金は先週上昇した後も底堅い。もみ合い局面では4,320と4,250が重要な注目点。
週初の金価格は1オンス=4,381ドル前後。地政学リスク(国際情勢の緊張)と米利上げ観測の後退が安全資産としての需要を支えている。
4,320を明確に維持できれば、強気の形は崩れにくい。4,250付近までの押し目(上昇後の下落)は、再び買いが入りやすいかを見極める水準となる。
米金利見通しの軟化、ドル安、地政学リスクが重なり、金は重要指標や米国債利回りの変化に敏感になりやすい。
米株は最高値圏
S&P500(米主要株価指数)は最高値近辺で推移。警戒ラインは7,750。7,750を終値で下回り、その後も下で推移する場合、利益確定売り(上昇分を確定する売り)が広がる可能性がある。
株式市場は、円キャリートレードの観点でも見る必要がある。米企業業績が堅調でも、円が急騰すればレバレッジ取引に圧力がかかり、世界市場のリスク資産全体に波及する恐れがある。
材料は二つに分かれる。FRBの引き締め観測後退は利回り低下を通じて株を下支えしやすい。一方、円の急変は世界の資金の流れを細らせ、売り圧力を強め得る。
ビットコインは下落圧力
ビットコイン(BTC)は下落基調が続き、次の重要水準は62,265(直近の安値=スイングロー)。
この安値を割り込めば、弱気の形が強まり、下げの勢いが増す可能性がある。踏みとどまる場合は、下げ止まりの兆しが出るかを確認したい。
暗号資産市場は、資金の流れ(流動性=市場で売買しやすい資金量)の影響を受けやすい。円高が急速に進み、キャリートレード解消が起きれば、ビットコインなど値動きの大きい資産(ハイベータ資産=市場全体より値動きが大きい傾向の資産)に追加の下押し圧力となり得る。
注目シンボル
USDX | USDJPY | SP500 | XAUUSD | BTCUSD
今後の主な予定
| 日付 | 通貨 | イベント | 予想 | 前回 | アナリスト見解 |
| 8月17日 | CAD | CPI 前月比(前の月からの物価変化) | 0.40% | -0.40% | 強い結果ならカナダドルを支え、カナダの物価上昇圧力に注目が集まりやすい。 |
| 8月19日 | GBP | CPI 前年比(1年前からの物価変化) | 2.90% | 2.60% | 2.9%へ上昇すれば、英中銀(BoE=イングランド銀行)が慎重な政策運営に傾くとの見方が広がり、ポンドを支えやすい。 |
| 8月20日 | USD | FOMC議事要旨 | – | – | 7月会合の論調と、インフレおよび今後の金利政策に関する意見の強弱を確認。 |
| 8月20日 | AUD | 失業率 | 4.40% | 4.40% | 4.4%据え置きなら雇用の底堅さを示す。予想外の悪化なら、豪中銀(RBA=オーストラリア準備銀行)の追加引き締め圧力が弱まりやすい。 |
主要な経済指標の予定は、VT Marketsの経済カレンダーで確認できる。
今週の主な値動き
USDX

- 99.80を注視。ここでの動きが、下落前のもみ合いになるかを左右しやすい。
- 下方向なら、98.95と98.70が下値の目安(サポート=下げにくい水準)。
EURUSD

- もみ合いなら、1.1530付近の底堅さ(強気の値動き)を確認。
- 上昇が続く場合、次の注目は1.1635。
GBPUSD

- もみ合いなら、1.3495付近の底堅さ(強気の値動き)を注視。
- 上昇が定着すれば、上値余地が広がる可能性。
USDJPY

- 上昇が続く場合、160.15を注視。
- この水準から急反落すれば、円高が進み、キャリートレード解消のリスクが高まる可能性。
XAUUSD (金)

- もみ合いなら、4,320と4,250の底堅さ(強気の値動き)を注視。
- これらの水準を維持できれば、強気の形が崩れにくい。
SP500

- 現在の形では7,750が重要水準。
- 7,750を終値で割り込み、下で推移が続けば、利益確定売りが広がる可能性。
BTCUSD

- 次の下値の目安は62,265(直近の安値)。
- この水準を割り込むと、弱気の形が強まりやすい。
USOUSD

- 原油(USOil)のもみ合いでは78.75付近の底堅さ(強気の値動き)を注視。
- この水準を明確に下回って推移が続くと、下落圧力が残りやすい。
まとめ
今週は、ドル、円、金が重要なテクニカル水準にある。USDXは99.80が上値の壁で、ドル円は160円付近と、介入リスクが意識されやすい水準に近い。金は4,320と4,250の上で強気の形を維持し、S&P500は7,750を守れないと利益確定売りが広がる恐れがある。主な材料は、8月17日のカナダCPI、8月19日の英国CPI、8月20日のFOMC議事要旨。米金融政策、日本の通貨政策、世界の資金の流れの組み合わせが、相場の方向を左右しやすい。
FAQs
Q: 今週、相場を動かす主な経済イベントは?
A: 8月17日のカナダCPI、8月19日の英国CPI、8月20日のFOMC議事要旨が焦点。インフレ、金利、為替の方向性の材料となる。
Q: なぜ円は世界市場の重要なリスク要因なのか?
A: 日本の借入金利が低く、円は調達通貨として使われやすい。円が急騰したり、ドル円が160.15付近から急反落したりすると、キャリートレードの解消やレバレッジ取引の縮小が進み、株式や暗号資産などリスク資産に売りが波及する可能性がある。
Q: 主要資産で注目すべき重要水準は?
A: USDXは99.80が上値抵抗で、下値の目安は98.95と98.70。金は4,320と4,250を維持できるかが焦点。S&P500は7,750が警戒線で、終値で下回ると利益確定売りが広がりやすい。ビットコインは62,265(直近の安値)が分岐点となる。
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