
ポイント
- IBM株は、第2四半期(4〜6月)の暫定(確報前の速報値)決算が市場予想を下回り、25%超下落。
- 終値は1株217.07ドル近辺。少なくとも58年で最大の1日下落となった。
- IBMは第2四半期売上高見通しを172億ドルと提示。アナリスト予想(約178.6億ドル)を下回った。
- アービンド・クリシュナCEOは、顧客がサーバー・ストレージ・メモリー(記憶装置)など機器購入に支出を振り向け、ソフトウェアやメインフレーム(大企業の基幹業務向け大型コンピューター)関連の商談が後ろ倒しになったと説明。
- IBMの日足チャート(1日ごとの値動き)では、上値の目安(レジスタンス)は230ドル近辺、下値の目安(サポート)は213ドルが当面の注目水準。
IBM株は火曜日、同社が発表した第2四半期の暫定決算が市場予想を下回り、急落した。
終値は217.07ドル近辺で、前日比25%超安。時価総額は約690億〜700億ドル減少し、少なくとも58年で最大の1日下落となった。
売りが膨らんだのは、IBMが第2四半期売上高を172億ドルと見込み、市場予想の約178.6億ドルを下回ったため。調整後1株利益(特別要因を除いた利益)は2.93ドルとし、予想(約3.02ドル)に届かなかった。
この警告を受け、IBMの立て直し(事業の採算改善)に遅れが出るとの懸念が広がった。企業のIT予算がAI関連の基盤整備に向かう局面であることも重なった。
IBMが注目される理由
市場が注目するのは、弱い四半期が一度で終わらない可能性があるためだ。
クリシュナCEOは、顧客がサーバー、ストレージ、メモリーの購入に支出を増やしたと説明。供給に制約がある機器(需要に対して供給が追いつきにくい機器)を値上げ前に確保する動きもあり、ソフトウェアやメインフレーム関連の案件に回る予算が減ったという。
IBMは高い利益率が見込めるソフトウェア(例:Red Hat、ハイブリッドクラウド、企業向けITサービス)を強化してきた。ソフトウェアの先行きが弱いと、戦略の持続性が問われやすい。
また、AI関連の支出配分により、テクノロジー株が大きく動きやすいことも示した。企業予算がハードウェアやデータセンター(サーバーを集約する施設)に向かうと、ソフトウェア企業は契約成立の遅れや短期需要の弱さに直面しやすい。
AI投資の偏りがソフトウェアの見通しを圧迫
IBMの警告は、AIブームがIT予算の配分を変えているとの懸念を強めた。
AI導入で、半導体(計算を担うチップ)、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器の需要が増える一方、ソフトウェアやコンサルティング、企業向けIT案件の支出を先送りする企業も出ている。
大型案件が想定どおりの時期に成立しなかったことも未達の主因という。IBMは、サイバーセキュリティ(不正アクセスや情報漏えいへの対策)を巡る懸念が急速に変化し、顧客の意思決定が鈍ったとも指摘した。
これは、AIがIBMのソフトウェア事業を置き換えているという意味ではない。より直接的な問題は、予算の優先順位変更だ。顧客はAI向け基盤に多額の投資を行い、ソフトウェアやサービスの判断が後ろ倒しになっている。
ソフトウェア・ITサービス株にも波及
IBMの警告は、ソフトウェアやITサービス業界全体の投資家心理にも影響した。
IBMの暫定決算が予想を下回ったことで、関連銘柄が下落。AI向けインフラ投資が、企業向けソフトウェア需要を圧迫する可能性を市場が見直した。
IBMは企業向けITの大手であり、商談の遅れや支出行動の変化が示されると、他のソフトウェア、クラウド、ITサービス企業にも同様の懸念が広がりやすい。
次の論点は、第2四半期の警告が一時的なタイミングのずれなのか、IT予算の構造変化なのかという点だ。
注目の取引水準
| 価格水準 | 注目点 |
| $300 | 警告前の回復ゾーン |
| $290 | 警告前の終値水準。急落で空いた価格帯(窓)の上値の目安 |
| $270 | 回復が進んだ場合の上値の目安 |
| $250 | 意識されやすい節目。かつての下値の目安 |
| $230 | 直近高値付近の上値の目安 |
| $220 | 現在値の上にある短期の戻り目安 |
| $217 | 足元の水準 |
| $213 | 直近安値付近の下値の目安 |
| $210 | 節目の下値の目安 |
| $200 | さらに下の心理的な節目 |
IBMの日足では、寄り付きが226.37ドル近辺、その後217.07ドル近辺で推移。高値は229.92ドル近辺、安値は213.22ドル程度だった。
前日までの取引レンジから大きく下に「窓」を空けて急落し、取引時間中に230ドルを回復できなかった。
当面の上値の目安は230ドル。ここを上回れば、250ドルが意識されやすい。
戻りが強まるには、250ドルを回復して維持する必要がある。その場合、270ドル、さらに窓の上側にあたる290ドル近辺が視野に入る。
下値の目安はまず213ドル。割り込むと210ドルが意識される。
強気・弱気の想定シナリオ

| シナリオ | 条件(トリガー) | 想定される市場反応 |
| 下げ止まりを試す | 213〜210ドルを維持 | 急落後のもみ合い(値動きが狭い状態)になりやすい |
| 強気の戻り | 230ドルを上回る | 250ドルの再トライが視野 |
| 戻りの加速 | 250ドルを上回る | 270ドルが意識される |
| 窓埋めの進展 | 日足の終値で270ドル超 | 290ドル近辺の価格帯が視野 |
| 弱気の続落 | 213ドルを割る | 210ドルを試しやすい |
| 下げの深掘り | 210ドルを割る | 200ドル方向に下落が広がる可能性 |
強気の戻りは、230ドルを回復し、その上で踏みとどまれるかが焦点。決算警告を受けた急落後の売り圧力が和らぐサインとなる。
250ドルを明確に上回れば、戻りの形が強まり、270ドルが意識される。290ドル近辺までの回復には、第2四半期の確報値と会社見通し(ガイダンス:企業が示す業績の見通し)への信頼回復が必要になりやすい。
中立の想定は、213〜230ドルのレンジでもみ合う展開。市場は、今後の第2四半期決算発表でより詳しい情報を待っている状態といえる。
弱気シナリオは、213ドル割れで強まる。明確に割り込めば210ドル、次いで200ドル(心理的節目)が意識されやすい。
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