ユーロ圏の経済指標は材料難だったが、8月上旬のインフレ速報では、エネルギー(とりわけガソリンなど自動車燃料)の上昇を背景に、フランスの総合インフレ率が前年比2.7%、スペインが同4.5%へと上振れした。一方、コアインフレは両国で低下しており、イラン戦争の開始から6カ月が経過した時点でも、二次波及効果が限定的であることを示唆する。市場は9月のECB利上げ(25bp)を完全に織り込んでおり、その後さらにほぼ1回の追加利上げが示唆されている。また本ノートは、2027年に預金ファシリティ金利が2.00%へ回帰するとの見方から、市場が離れつつある点も指摘する。
米国では、7月のPCEデフレーター(総合)が前年比3.7%と、コンセンサス(3.6%)を上回り、前回(3.7%)から横ばいだった。コアPCEは前年比3.3%、前月比0.2%となった。改定値の4-6月期GDPは年率換算(SAAR)で1.5%に据え置かれたが、個人消費、輸入、価格デフレーターが上方修正され、企業利益も大幅増となった。これを受け米金利は上昇し、EUR/USDは下落した。ドイツのIfo景況感指数は改善し、現況判断が88.5(市場予想87.0、前回86.6)、期待指数が89.1(市場予想87.5、前回86.6)だった。来週の注目は、米非農業部門雇用者数(当社予想6.5万人、市場予想5.5万人)、失業率4.1%、平均時給前月比0.3%に加え、ユーロ圏HICPが前年比3.4%(前回3.0%)、コアが前年比2.4%(前回2.5%)となる見通しだ。
ユーロ圏と米国の政策期待の変化に備えるデリバティブ戦略
当社は、9月会合後のユーロ圏金利見通しがハト派方向へ転じることを見据え、デリバティブ・トレーダーにはポジショニングを推奨する。スワップ市場は現時点で9月の25bp利上げを織り込み、年内に追加利上げに傾いているが、当社はECBが据え置きに転じるとみる。こうした織り込みのズレを突く手段として、2026年12月限のユーロリボー先物の買い、またはレシーバー・スワップの構築により、「2回目の利上げが実現しない」シナリオを狙える。
米国の4-6月期GDPが1.5%で底堅く、PCEインフレが3.7%へやや強含むなか、米国債利回りの上昇圧力がEUR/USDを1.08近辺へ押し下げている。当社は来週の非農業部門雇用者数が市場予想(5.5万人)を上回る6.5万人になると見込み、米ドルを一段と下支えすると考える。デリバティブ・トレーダーは、雇用統計発表を前に短期のEUR/USDプット(売る権利)を買い、下落モメンタムの取り込みを検討したい。
インフレの乖離とユーロ圏イールドカーブの取引
スペインおよびフランスの総合インフレ率はエネルギーコスト上昇で持ち直した一方、ユーロ圏のコアインフレは来週、2.4%へ低下する見通しだ。この乖離は、今年前半の中東情勢を背景としたエネルギー価格の変動が、二次的なインフレ波及を引き起こせなかったことを示す。ドイツの製造業が回復に向かう中(Ifoが88.5へ上昇)、トレーダーはドイツ国債(ブント)を対象としたイールドカーブ・フラットナー(フラット化)戦略のオプション買いを検討したい。
ECBが2027年に預金ファシリティ金利を2.00%へ引き下げるとの見方は後退しており、長期の金利期待は上方修正が必要となる。今後2年の急速な緩和局面を見込む長期のレシーバー・スワップションは回避すべきだ。代わりに、期先のユーロリボー・カレンダースプレッドを売ることで、「高金利が長期化(higher for longer)」する欧州金利環境から収益機会を見出せる。
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