
要点
- 米10年国債利回り(米国政府が10年で返す国債の利回り)は、先週4.50%に接近した後、4.47%近辺まで低下した。
- 6月の非農業部門雇用者数(農業を除く就業者の増減)は+5.7万人と、市場予想(+11.0万人)を下回った。
- 4月・5月分は合計で7.4万人下方修正された。
- 雇用指標の弱さで、米連邦準備制度理事会(FRB:米国の中央銀行)が近く追加利上げするとの見方が後退した。
- 原油安で、これまで利回り上昇を支えていたインフレ懸念がやや和らいだ。
- 米10年金利の日足では、当面の下値メドは4.44%近辺、上値の最初の壁は4.48%〜4.50%。
米10年国債利回りは週明け月曜、弱めの雇用統計を見極めつつ、FRBの6月会合議事要旨の公表を控える中で低下した。
米10年金利は4.47%近辺へ下げ、直近の上昇分を一部吐き出した。一般に国債価格と利回りは逆に動くため、利回り低下は10年国債に買いが入ったことを示す。
この動きは、6月の雇用統計を受けた米国債市場の反応が続いた形だ。非農業部門雇用者数は+5.7万人で、市場予想の+11.0万人を下回った。4月と5月も合計で7.4万人下方修正された。
失業率(働きたい人のうち職がない人の割合)は4.2%へ小幅に低下した一方、労働参加率(働く意思がある人の比率)は61.5%へ低下した。失業率の低下は、雇用が強いというより、労働市場から離れる人が増えた影響もあることを示唆する。
雇用の弱さは、FRBが追加の金融引き締め(利上げなどで景気を冷ます政策)を急がず、インフレ(物価の上昇)の状況を見極める余地を広げた。
年内の追加利上げ回避という見方は、確定した方針ではなく市場参加者の評価にすぎない。ただ、弱い雇用データを受け、早期の追加利上げ観測は後退し、国債価格の支えとなって利回りに下押し圧力がかかった。
注目される理由
米10年国債利回りは、中長期の景気、インフレ、FRBの政策見通しを映す指標として市場の注目度が高い。
足元では、雇用の減速と根強いインフレ懸念を天秤にかける局面にある。
採用の鈍化は、近い将来の追加利上げの必要性を下げる。一方でFRBはインフレ抑制を重視しており、追加の政策対応を否定していない。
FRBは6月16〜17日の会合で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジ(政策金利の目標幅)を3.50%〜3.75%に据え置いた。
近く公表されるFOMC議事要旨(米連邦公開市場委員会の会合の議論内容)は、物価、雇用、追加引き締めの必要性を政策担当者がどう見たか、より詳しい手掛かりになり得る。
そのため米10年金利は、議事要旨の前後で金利見通しの変化に反応しやすい。
重要な利回り水準

| 利回り水準 | 注目点 |
| 4.56% | 6月高値圏の上値抵抗(上がりにくい水準) |
| 4.52% | 現行レンジ上抜け後の次の上値抵抗 |
| 4.50% | 節目(心理的に意識されやすい)かつテクニカル上の上値抵抗 |
| 4.48% | 直近高値近辺の目先の上値抵抗 |
| 4.47% | 現在の水準 |
| 4.44% | 目先の下値支持(下げ止まりやすい水準) |
| 4.40% | 節目かつテクニカル上の下値支持 |
| 4.36% | 直近の安値(スイングロー:短期の戻りを伴う安値)と下値の目安 |
日足では、米10年金利は6月下旬の安値4.36%近辺から反発し、足元は4.465%近辺。ただし戻りは4.48%〜4.50%の上値抵抗の手前で一服している。
4.48%を明確に上回れば、4.50%が再び焦点になりやすい。ただ、上昇が続くには4.50%を上抜け、その水準を維持する必要がある。
4.50%を超えて定着すれば、次は4.52%、さらに4.56%近辺が意識される。
下方向では、まず4.44%が目先の下値支持。ここを割り込むと、節目の4.40%が視野に入る。
上昇・下落の想定シナリオ
| シナリオ | きっかけ | 市場の反応(想定) |
| 利回り持ち直し | 4.48%を上回る | 4.50%を再度試しやすい |
| 利回り上放れ | 4.50%を上抜け | 4.52%〜4.56%が意識される |
| レンジ相場 | 4.44%〜4.50%にとどまる | 市場はFRBの手掛かり待ちになりやすい |
| 利回り低下 | 4.44%を下抜け | 4.40%へ低下しやすい |
| 下落加速 | 4.40%を下回る | 4.36%近辺まで下げが広がる可能性 |
利回り上昇シナリオは、4.48%超えに加え、4.50%を明確に上抜けて定着できるかが焦点となる。政策金利がさらに上がる、またはインフレが長引くとの見方が強まる場合に起きやすい。
一段の上昇には4.52%の上抜けが必要で、達成すれば4.56%近辺まで視野が広がる。
中立シナリオは4.44%〜4.50%のもみ合い。FOMC議事要旨や国債入札(財務省が国債を販売し投資家需要を測るイベント)を見極めるまで、方向感が出にくいことを示す。
利回り低下シナリオは、4.44%割れで強まりやすい。割れが確認されれば4.40%が焦点。4.40%も割れると、直近安値の4.36%近辺を試す可能性がある。
利回り低下は国債価格の上昇要因になりやすく、利回り上昇は国債価格の下押し要因になりやすい。
免責事項
上記の価格水準やシナリオは執筆時点の筆者見解であり、投資助言ではない。取引にあたっては自身で検討し、リスク管理を徹底したい。
次の注目材料
最大の材料は、FRBの6月16〜17日会合の議事要旨で、7月8日(水)に公表予定。
市場が確認したい点は以下の通り。
- 追加利上げを支持する意見がどの程度あったか
- インフレが続くことへの警戒感の強さ
- 雇用の伸び鈍化を議論したか
- どのような経済条件で政策姿勢が変わり得るか
- 物価リスクと雇用リスクのバランスをどう評価したか
議事要旨の表現次第で、米10年金利が4.50%を上抜けられないのか、再び上昇基調に戻るのかが左右されやすい。
国債入札も投資家需要を測る材料になる。10年債と30年債の入札結果は、現行利回りで長期の国債を買う需要がどの程度あるかを映す。
入札が強ければ利回り上昇は抑えられやすい一方、需要が弱ければ利回りに上昇圧力がかかりやすい。
議事要旨と入札に加え、インフレ指標、週次の新規失業保険申請件数(失業給付の新規申請数で雇用の先行指標)、FRB関係者の発言を追う必要がある。
当面の短期レンジは4.44%〜4.50%。4.50%を明確に上抜ければ4.52%や4.56%が焦点となり、4.44%を割り込めば4.40%が意識される。
よくある質問
米10年国債利回りはなぜ低下したのか。
6月の雇用者数の伸びが+5.7万人に鈍化し、過去2カ月分も下方修正されたため。FRBが近く追加で利上げする必要性が下がるとの見方が広がった。
利回りが低下すると国債価格はどうなるのか。
通常、国債価格と利回りは逆に動く。国債の需要が増えると価格が上がり、利回りは下がる。売りが増えると価格が下がり、利回りは上がる。
米10年は「ボンド(長期債)」か「ノート(中期債)」か。
米財務省は、当初の満期が2年〜10年の国債を「ノート(中期国債)」に分類する。代表的な10年物は厳密にはノートだが、市場では広く「債券(ボンド)市場」の一部として語られることが多い。
FOMC議事要旨が米10年金利に重要なのはなぜか。
政策声明よりも議論の中身が詳しく、政策担当者がインフレや雇用、追加の金利変更の必要性をどう見たかが分かりやすい。
米10年金利の重要水準は。
下値は4.44%、次に4.40%、4.36%。上値は4.48%、次に4.50%、4.52%、4.56%。
米10年金利が4.50%を上回る要因は。
経済指標の上振れ、インフレの長期化、FRBのメッセージがより引き締め寄り(高金利を長く維持する姿勢)になれば、政策金利の高止まり観測が強まり、4.50%超につながり得る。
米10年金利が4.40%を下回る要因は。
経済指標の弱含み、インフレ圧力の後退、FRBの見通しが慎重になれば、国債需要が強まり、4.40%割れにつながり得る。
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