金(XAU/USD)は水曜日の欧州時間序盤に下落幅を拡大し、4,450ドルを割り込んで週次の新安値を付けた。原油価格が3日続伸したことでインフレ懸念が再燃し、金利が高水準にとどまるとの見方が強まった。こうした動きは、中東情勢の緊迫化の中で米ドルの基軸通貨としての魅力を押し上げ、利回りを生まない金属である金に下押し圧力を与えた。クリーブランド連銀のベス・ハマック総裁は、インフレ率を2%に戻すというFRBのコミットメントを改めて強調。加えて、CMEグループのFedWatchツールによれば、12月会合での25bp利上げ確率は50%超と市場で織り込まれており、米国債利回りの下支え要因となっている。
地政学面では、米中央軍がイランのケシュム島に対し「自衛」の攻撃を実施したと発表した後、イランはクウェートおよびバーレーンの米関連施設にミサイルとドローンを発射し、その大半は米国および湾岸諸国の防空網が迎撃したという。イスラエルとヒズボラの交戦も激化している。マルコ・ルビオ氏は、ホルムズ海峡の再開と引き換えに制裁を解除しないと述べ、ドナルド・トランプ氏は停戦延長(期限を区切らない)と、協議が終結するまで米国による封鎖を継続すると発表した。テクニカル面では、XAU/USDは4時間足で200期間EMAを下回る下降チャネル内にあり、RSIは46近辺、MACDはゼロラインを下回って推移。上値抵抗は4,598.83ドル、次いで4,634.83ドル、下値支持は4,322.55ドル近辺に位置する。
地政学的緊張とインフレ動学
地政学的緊張の高まりは短期的に皮肉にも金に弱気要因だと考える。市場の焦点が、安全資産需要よりも「インフレ再燃」という帰結に向かっているためだ。原油高は米ドルを押し上げ、FRBが金利をより長く高水準に維持するとの見方を補強している。この強いドルが現在、金が持つ伝統的な安全資産としての魅力を上回る主要な逆風となっている。
最新の米消費者物価指数(CPI)では、コアインフレ率が3.4%と粘着的に高止まりし、FRBの政策運営余地は極めて限られている。中東紛争を背景に原油が1バレル95ドルを上回る局面に入ったことで、12月利上げの市場暗示確率50%は保守的な見積もりだとみている。この環境は米ドル高基調の継続と、無利回り資産への圧力という当社見通しを下支えする。
戦略と歴史的視点
下降チャネル内という弱気のテクニカル環境を踏まえ、今後数週間は金先物や関連ETFに対するプットオプションの買いを検討したい。4,600ドルのレジスタンスに向けた短期反発があれば、新規のショート(売り)を構築する好機と位置付ける。初期目標は、チャネル下限に近い4,322ドルのサポート水準である。
VIX指数で測られる市場ボラティリティは19まで上昇している一方、金オプションのインプライド・ボラティリティはリスク増大をまだ十分に織り込んでいない。このため、ベア・プット・スプレッドを用いてポジションを構築し、取引開始時のコストを抑える余地がある。これは、下落局面で収益機会を狙いつつ、地政学的リスクが急速に緩和した場合の影響を管理する戦略である。
このパターンは、1970年代後半のエネルギーショックなど過去局面を想起させる。当時、FRBのインフレ抑制に向けた強硬対応は、最終的にドルを大きく押し上げた。そうした局面では、紛争ヘッジとしての金の魅力をドルの優位性が上回った。今後数週間も同様の力学が働く可能性が高く、金はショートがより有力な取引シナリオだと見込む。
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