金は週末13日、4,200ドル台を維持し、4,216ドルで取引された(前日比0.11%高)。来週にも米国とイランが合意に至る可能性が取り沙汰され、リスク選好を下支えした。市場の焦点は「イスラマバード覚書(MOU)」に移っており、ジュネーブで開催されるG7会合前後での署名観測が浮上する一方、イラン外務省は意思決定機関がなお文書を精査しているとした。合意となればホルムズ海峡の再開が見込まれ、エネルギー価格に下押し圧力がかかることで、主要中銀におけるインフレ警戒の後退につながり得る。
金利環境はまちまちだ。年初来では豪準備銀行(RBA)が75bp、欧州中央銀行(ECB)が25bp利上げした一方、米金利の上昇が金(ブル)には重しとなった。米10年国債利回りは1.5bp上昇して4.477%。ドル指数(DXY)は99.77とほぼ横ばい(0.06%高)。米国では6月の消費者マインドが44.8から48.9へ改善し、1年先インフレ期待は4.8%から4.6%へ低下。今後はFOMC結果、経済見通し(SEP)、小売売上高に注目が集まる。テクニカル面では金は木曜日に3.50%反発。上値抵抗は4,250ドル、その上は4,300ドル、さらに200日移動平均線(SMA)の4,450ドル。下値支持は4,200ドル、次いで4,150ドル、4,023ドル、4,000ドル。
地政学的不確実性の下で金は双方向リスク
米・イラン合意をめぐる不確実性を踏まえると、金は顕著な「双方向リスク」にさらされている。市場は、中銀がハト派へ転じるという強気材料と、大きな地政学リスク・プレミアムの剥落という弱気材料の間で綱引き状態だ。この構図は単純な方向性の賭けを危うくし、むしろボラティリティそのものから収益機会を狙う戦略を示唆する。
最も慎重なアプローチは、G7会合に絡むニュースでの価格急変を想定し、オプションで取りにいくことだろう。金オプションのインプライド・ボラティリティは高止まりしやすく、ゴールドVIX(GVZ)は長期平均の17を上回って推移する可能性がある。これは大きな値動きが既に織り込まれていることを意味する。ストラドルやストラングルを用いれば、合意の帰趨を当てにいかずとも、どちら方向の急変でも収益化を狙える。
取引戦略と中銀政策の影響
強気スタンスを取らざるを得ない場合、その根拠は連邦準備制度理事会(FRB)の反応に尽きる。合意によりインフレ圧力が和らげば、FRBがハト派方向へ傾く可能性があり、歴史的には金を押し上げやすい。例えば2023年後半には、利下げ期待だけで金が15%超上昇した局面があった。このシナリオでは、4,300ドルのレジスタンスを目標にコール、またはブル・コール・スプレッドが選択肢となる。
一方で、合意署名後に「材料出尽くし(sell the news)」となる可能性は十分にある。金を4,200ドル超へ押し上げた地政学的恐怖が消え、2015年にイラン核合意の枠組みが公表された後に原油が大きく下落したのと同様の反応が想定される。この場合、6月11日安値の4,023ドル近辺のサポートをターゲットにプット買いが示唆される。
最後に、来週のFOMC(議長ウォーシュの下で初の会合)を注視する必要がある。合意の有無にかかわらず、市場期待の形成において議長のトーンが決定的となる。また、不確実性の解消によりFOMC発表直後にオプション・プレミアムが急低下する「ボラティリティ・クラッシュ」にも備えるべきだ。
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