インド準備銀行(RBI)は2026年6月5日の金融政策会合で、インドルピーの下支えを目的とする措置を公表した。具体的には、新規の3〜5年物FCNR(B)預金を調達する銀行に対する為替ヘッジコストの全額補助に加え、国有企業による外貨建て借入(ECB)起債を促すための優遇的なFXスワップ・ファシリティを導入する。これとは別に、政府は海外投資家に対する国債投資のキャピタルゲイン課税および利子課税を撤廃し、2026年4月1日に遡及適用するとともに、投資適格となる国債の対象範囲も拡大した。
MUFGは、これらの措置により約400億米ドルの資金流入が見込まれると推計しており、インドがブルームバーグ・グローバル総合指数(Bloomberg Global Aggregate Index)に組み入れられた場合には、さらに上振れ余地があるとしている。これを踏まえ同行は、ルピー見通しを短期的に強含むプロファイルへ修正し、USD/INRは9月期に94.00まで低下した後、翌暦年には96.00近辺へ戻ると予想した。加えて、INR金利は引き続き緩やかに上昇する見通しとしている。
—短期見通し:ルピー高と市場の反応
RBIの新たな政策を踏まえると、インドルピーは短期的に上昇基調となる公算が大きい。資本流入の押し上げを狙ったこれらの措置により、当社の見通しは根本的に変化した。今後数週間はUSD/INRが低下する展開を想定している。
足元の市場データもこの見方を裏付けている。発表後の2営業日でルピーは対ドルで95.10から94.75へ上昇した。清算機関データによれば、外国人ポートフォリオ投資家(FPI)は6月5日以降、インド国債にネットで52億ドルを投じており、初動の旺盛な需要は政策の実効性に対する確信を強める材料となる。
デリバティブ取引の観点では、8〜9月期限の短期USDコールの売却、またはUSDプットの購入が示唆される。想定される94.00方向への動きを取り込む戦略である。CBOE/NSEルピー・ボラティリティ指数も措置公表後に15%低下しており、オプション・プレミアムの売りが魅力的となる可能性がある。
—歴史的背景と中期予測
今回の状況は、2013年にRBIがFCNR(B)預金向けに類似のスワップ窓口を設け、300億ドル超の資金を呼び込み、「テーパー・タントラム」局面でルピー安定化に寄与した事例を想起させる。今回のパッケージは当時より包括的とみられる。過去の前例に加え、海外投資家に対するキャピタルゲイン課税撤廃も踏まえると、見込まれる約400億ドルの流入は現実的な水準と考えられる。
もっとも、予測では来年にUSD/INRが96.00方向へ反発するシナリオも織り込まれている。このため、短期のルピー高を見込みつつも、9月期を超えてUSD/INRの下方向(ルピー高)ベットを延長する際には慎重さが求められる。2027年にルピーの地合いが反転する局面で恩恵を受ける、より長期のストラクチャーを検討することも一案となろう。
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