SpaceXは6月12日に上場予定で、時価総額1.75兆ドルを目標に、1株135ドルで750億ドルを調達する計画とされる。初値が2兆ドルまで伸びるとの観測や、AI収益が2030年までに100倍に拡大するとの予測も取り沙汰されている。同社はブックビルディングに先立ち1株135ドルの価格を設定した。需要の強さを示す指標としては、Cerebrasが約20倍の超過応募だったこと、個人向け配分が30%であること、日本向けトランシェが25%増額されたことなどが挙げられている。届出書類では、太陽の出力の活用から最大100万基の衛星運用に至るまでの野心的な構想を掲げ、2028年以降に軌道上AIコンピュートを展開する計画も示した。
目論見書の財務情報では、Starlinkが主たる収益・利益源で、2025年売上高は114億ドル、調整後EBITDAは72億ドル。一方、宇宙(Space)部門はStarship関連支出30億ドルを吸収しつつ、営業段階ではなお赤字だった。SpaceXは2025年に49億ドルの損失を計上し、2026年第1四半期にも43億ドルの追加損失を計上。StarlinkのARPU(月次平均売上)は2023年の月99ドルから、91ドル、81ドルへ低下し、1Qでは66ドルまで下落したが、加入者数は約1,030万人に近づいた。2月に統合されたxAIは2025年に営業損失64億ドルを計上。届出書類ではTAM(総潜在市場)を合計28.5兆ドル(うちAIが26.5兆ドル)と試算し、90日前通知で解除可能な月額12.5億ドルのAnthropic契約、Cursorに連動する600億ドルの全株式オプション、TeslaおよびIntelとの非拘束的枠組みとしてのTerafabに言及した。AI向け設備投資は2025年に127億ドルで、1Qは総額の約4分の3を占め、同四半期の投資キャッシュアウトフローは167億ドルに達した。現金は247億ドルから3月末時点で159億ドルへ減少し、負債は291億ドル。S&P Dow Jonesの採算要件により、当面S&P500採用は見込まれない一方、NASDAQ-100は上場後約15営業日での組み入れが見込まれ、Russell指数も追随するとされる。指数連動の買い需要は、30兆ドル超のパッシブ資産を背景に、220億〜600億ドルとの推計がある。インサイダー売却は、最初の四半期決算(8月が有力)後の「第2取引日」から開始可能な設計で、フレンズ&ファミリー枠にはロックアップがない。届出書類ではFTCおよび欧州当局による調査にも言及している。
初動の売買ダイナミクスとオプション戦略
6月12日の上場を前に需要が極めて強いことを踏まえると、初日は急激な上昇に振れやすいと見込まれる。IPO前のグレーマーケットでは、目安となる買い気配が一時180ドルに達しており、公開価格(135ドル)に対して大幅なプレミアムとなっていることから、買い付け待ちの行列が長いことが確認できる。直近の焦点は初期の「跳ね」を確実に取りに行くことであり、初期数日間は個人需要と乗り遅れ懸念が、ファンダメンタルズ面の懸念を上回りやすい。
上場直後に取引開始となるオプションのインプライド・ボラティリティ(IV)は極めて高水準になる見通しで、初回の月次限月でIVが150%を超える可能性を示す初期シグナルもある。これによりプレミアムの売りは例外的にリスクが高い一方、コール/プットの単純買いも高コストになりやすい。想定されるボラティリティ・クラッシュに備えてコストを限定しつつ初期上昇を狙う手段として、コールスプレッドのようなリスク限定型戦略に機会があるとみる。
指数採用、機関投資家動向、中期戦略
IPO後の重要なカタリストは、指数連動ファンドによる強制的な買い付けである。Nasdaqのファスト・エントリー規則により、NASDAQ-100に連動するパッシブ資金は7月上旬ごろに株式を買い入れる必要があり、価格にかかわらず予見可能な需要の波を生む。バンク・オブ・アメリカの最近の調査では、多くの機関投資家がIPO後の株価上昇を見込む一方、過半が「ファンダメンタルズ面で割高」と考え、6カ月以内に売却する計画だとされ、指数組み入れに伴う流動性を出口として活用する可能性が示唆される。
同様のパターンは、2020年後半のTeslaのS&P500採用で顕著にみられ、指数買いが完了した日とほぼ同時期に株価がピークを付けた。SpaceXでは、最初のインサイダー・ロックアップ解除が8月の初回決算直後に設定されており、パッシブ需要が満たされていく局面と重なりやすい。結果として、最も情報に通じた売り手が、最大の「価格非感応的」買い手を吸収し終えた市場に向けて持ち分を分配し始める、というシナリオが成立し得る。
したがって戦略は二段階となる。短期的には初動の急騰と指数組み入れに向けた上昇局面からの収益化を狙い、7月限のコールオプションなどの活用が想定される。その後は、構造的な買いが一巡しインサイダー売りが始まる局面で需給が転換することを見据え、8月下旬以降を期限とするプットオプションに軸足を移す準備を進める。
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