中国人民銀行(PBOC)は月曜日の米ドル/人民元(USD/CNY)の基準値(毎営業日に示す公式な中心レート)を6.8318に設定した。これは金曜日の6.8373より人民元高方向だが、ロイター推定の6.7880(市場見通し)よりは人民元安方向となった。PBOCは日々の基準値を管理し、物価の安定(為替の安定を含む)を支えるとともに、経済成長の促進や、市場開放・金融市場の発展などの金融改革を進める役割を担う。
PBOCは中華人民共和国の国有の中央銀行で、独立性は高くない。運営方針は国務院を通じて任命される中国共産党の党委員会書記の影響を受ける。この役職は現在、総裁も兼ねる潘功勝氏が担っている。政策運営では複数の手段を用いる。具体的には、7日物リバースレポ金利(中央銀行が短期資金を供給する際の金利)、中期貸出制度(MLF:金融機関に中期で資金を貸し出す仕組み)、為替介入(外貨売買で為替を調整すること)、預金準備率(RRR:銀行が預金の一定割合を中央銀行に預ける比率)などだ。一方、ローンプライムレート(LPR:銀行の貸出金利の目安)は借入コスト、住宅ローン金利、預金金利に影響し、その結果として人民元にも波及する。中国はWeBankやMYbankなどのデジタル金融機関を含む民間銀行19行を認めており、2014年以降は完全な民間資本による国内銀行の設立も認めている。
PBOC’s Policy Of Managed Depreciation
今回のPBOCのUSD/CNY基準値は、人民元安を段階的に容認する管理姿勢を示す。基準値自体は前日より人民元高方向に置かれたものの、市場予想よりは大きく人民元安方向で、当局が景気下支えのために通貨安を許容していることを示唆する。こうした管理は、急落による資本流出(海外への資金流出)が無秩序に起きるリスクを抑える狙いがある。
背景には、足元の経済指標の弱さがある。中国の4月輸出は前年同月比で1.5%減となり、世界需要の弱さにより製造業への圧力が続くことを示した。工業生産も減速している。中央銀行が政策金利の指標であるLPRを大幅に引き下げることに慎重な中、為替レートを競争力(輸出の価格面の優位性)の調整手段として使っているとみられる。
Market Implications And Trading Strategies
デリバティブ(金融派生商品)市場では機会が生まれやすい。米中の金利差は大きく、人民元には下押し圧力がかかりやすい状況が続く。今後数週間、USD/CNYが緩やかに上昇(人民元安)する方向へのポジションに妙味がある。
トレーダーにとっては、USD/CNHの短期コールオプション(上昇時に利益が出る権利)を買う戦略が有効となり得る。人民元安の進行に備えつつ、PBOCが想定以上に強く介入した場合の損失を限定できるためだ。市場が当局の人民元安許容度を探る局面では、インプライド・ボラティリティ(オプション価格に織り込まれた予想変動率)が上昇しやすい。